沼諭・前市議会議長(元民主党)の市税滞納に対して
議長報酬の差し押さえを求める監査請求書を提出、
さらに、監査却下に対して公開質問状を提出しました

(2008・08・01最終更新)

 

(1)議長報酬の差し押さえを求める監査請求書(20080502)(0530修正済み)

(2)意見陳述書(20080530)

(3)監査結果は「却下」(20080627)

(4)監査結果についての公開質問状(20080729)

(5)監査結果についての公開質問状に対する回答(20080801)


(1)議長報酬の差し押さえを求める監査請求書(20050502)(0530修正済み)

 

橿原市職員措置請求書

平成20年 5月 2日

橿原市監査委員 各位

請求人               

住所 奈良県橿原市白橿町8-17-14 

氏名 : 奥田 寛  印 

職業 : 橿原市議会議員

外 18名 


下記のとおり、地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添付の上、必要な措置を請求する。

請求の要旨

 平成20年5月2日現在、法務局が発行した登記事項証明書によって、元橿原市長・安曽田豊氏が、平成18年5月25日(設定は26日)付けで橿原市議会議員(現・議長)・平沼諭氏の所有する橿原市●●町●丁目****-***の土地建物に対して636万6900円の市税の換価の猶予に係る抵当権設定を行っていること、また、現在もこれが解除されていないことから、橿原市が平沼氏に長きに渡って市税(市民税・固定資産税・都市計画税・国民健康保険税・軽自動車税などのいずれであるかは明らかではない)の滞納を許す一方、平沼氏の議員(議長)報酬の差し押さえを行ってこなかったことが明らかになっている。

 平沼氏は、橿原市議会議員としての報酬を橿原市(議会)から受け取るようになって通算6期・24年目であり、そのうち、平成18年5月より平成20年4月までの2年間の報酬総額は税込み1870万3677円と、抵当権設定額の約3倍にのぼる。

 一方、平沼氏の議員(議長)としての平成20年5月より平成21年2月までの10ヶ月の残任期間に橿原市(議会)が支払う予定の報酬手当て等の総額は971万6805円、ここから所得税・市県民税・議員共済費(議員年金)の掛け金等を差し引いた手取り額は、概算で568万2829円程度と、抵当権設定額を下回る。

 平沼氏が次期以降も議員を続け、安定した収入があるという保障はどこにもなく、橿原市は、直ちに平沼氏の議長報酬を差し押さえるか抵当権設定した土地建物を換価するなどして、滞納市税の回収に努めるべきところ、何ら対処をしないことは、単年度毎の橿原市の歳入に損害を与えているばかりか、刻一刻と、永遠に滞納額を回収できなくなる危険性を高めているものと言わざるを得ない。

 よって、厳正な監査の上、速やかな措置をとられることを求める。

請求の理由

1.橿原市が行った財務会計上の行為

(1)  平沼諭氏は昭和60年2月に橿原市議会議員選挙に当選、以来、平成元年2月・平成5年2月・平成9年2月・平成13年2月・平成17年2月と再選を果たし、現在6期目を勤めており、この23年数ヶ月の間、橿原市(予算執行権者)と、橿原市議会(平成14年6月より、納税義務者に対して給与の支払をし、市県民税の特別徴収を行う義務者)は、平沼氏に対して議員(あるいは議長その他の兼務する役職)としての報酬・手当て等を支払い続けている。

 この内、平成18年5月25日より平成20年4月25日までの2年間に支出された月額報酬は50万円を超え、主な報酬(政務調査費・役職兼務による委員の日当などを除く)だけでも総額は税込み1870万3677円に達する。(事実証明書@:橿原市が平沼諭氏に支出した主な議員報酬の概算表)

(2)  橿原市(議会)が平成20年5月より平成21年2月までの議員としての残任期間に平沼氏に支払う予定になっている(議長としての)報酬額は971万6805円であり、その内、所得税・市県民税・議員共済費(議員年金)の掛け金を差し引いた金額は概算で568万2829円程度と見込まれる。(事実証明書@)

(3)  橿原市は、平成18年5月25日(設定は26日)付けで平沼氏が所有する土地建物に対して636万6900円分の市税の換価の猶予に係る抵当権設定を行った。(事実証明書A:橿原市●●町●丁目****-***の土地建物に関する登記事項証明書:平成20年5月2日)

(4)  事実証明書Aから、平沼氏の議員報酬を橿原市が差し押さえせず、長きに渡って滞納市税の徴収を猶予してきたことが明らかである。
 もしも議員報酬を差し押さえていれば、滞納市税はすでに回収され、この土地建物の抵当権設定はすでに解除されていなければならないが、そうはなっていないからである。

 ただし、地方税法第15条によれば、徴収の猶予の要件は、災害・盗難・病気・負傷・事業の休止・事業の廃止・事業についての損失などに限られ、その期間も、通常は1年、長くとも2年を超えることは出来ないものであり、その手続きが正当なものであったとは限らない。(資料B滞納整理フローチャート図:地方公共団体徴収実務の要点1821の2〜3)

(5)  事実証明書Aから、橿原市が平沼氏に対して何らかの事情により、抵当権設定した土地建物の換価を2年近く猶予していることがわかる。
 
地方税法第15条によれば、換価の猶予の要件は、徴収の猶予の要件よりもさらに厳しく、その期間も、通常は1年、長くとも2年を超えることは出来ない。(5月30日修正)

(6)  橿原市の総務部市民税課は、平成14年6月以降、毎年、橿原市議会を市県民税の特別徴収義務者として指定しているが、橿原市議会は、必ずしも、議員としての報酬を主たる収入としている者たち全員から特別徴収を行い、納税しているわけではない。

 これ自身、特別徴収義務者としての違反行為にあたるが、仮に、平沼氏の市税滞納項目(市民税・固定資産税・都市計画税・国民健康保険税・軽自動車税など)の中に、市民税が含まれていたとするならば、それは市民税の特別徴収を議会事務局が怠ってきた結果と言えるので、歴代市議会議長をはじめとする市議会議員、議会事務局にも本件に関する責任があることになろう。(参考:地方税法第321条の4:特別徴収義務者の指定等)

(7) 橿原市(教育委員会)は、事実証明書Aにも名前のある平沼諭氏の妻・◎◎◎◎氏を、平成18年度・19年度・20年度、橿原市立○○中学校に勤務する正規の教職員として服務監督し、県費負担教職員としての生活給を得ることを認めている。(事実証明書C:奈良県教員関係職員録・部分)(5月30日修正)

 これらの事実がありながら、橿原市は未だに平沼氏の議員(議長)報酬の差し押さえという比較的容易な手段を履行することなく、また、その代替的な措置として、抵当権をとった土地建物の換価に向かうでもなく、本来、単年度の歳入として橿原市に入るべき税収を徴収せず損害を発生せしめている。

 平沼氏の議員(議長)としての(報酬が予定された)任期は残り10ヶ月しかなく、今後も議員を続け、安定した収入があるとは限らないこと、その他の不安要素を考え合わせれば、橿原市は、一刻も早く徴税をすべきところ、それを怠り、ずるずると引き延ばしてきたことによって、平沼氏から滞納市税を全額徴収し損ねる確率を飛躍的に高めてきたと言わざるを得ない。

 監査委員各位におかれては、現在の滞納残高が何年に渡って猶予されているかだけでなく、これまでの平沼氏の市税滞納金額が停止措置等によって不納欠損処分に付されている可能性もないとは言えないので、それらの事実確認を踏まえた上で、現在、橿原市が行っている判断と作業が本当に法に則していると言えるのか、厳正な監査をお願いしたい。

2.橿原市の市税徴収に関する不作為が違法または不当である理由

(1)  平沼氏の市税滞納がいつから始まっているものかは定かではないが、抵当権設定は平成18年であり、そこから24年も遡ることはないであろう。

 橿原市は昭和60年(1985年)2月以降、23年数ヶ月間もの長期に渡って平沼氏に議員報酬(時には月額70万円を超える議長報酬)を支払っている。

 しかも、平沼氏の場合、妻が正規の中学校教諭として生活給を得ているため、本人の収入を差し押さえても特に生活に困窮するものとは思われず、また、制度的にも議員報酬は生活給ではないため、1/4ではなく全額差し押さえすることが可能であり、滞納が始まったと同時に、いつでも直ちに議員報酬を差し押さえて解消を図ることができたはずである。

 このような状況の中で、あえて

@長きに渡って、議員報酬の差し押さえ等の市として取り得るすべての措置を怠り、平成18年5月までに平沼氏に636万6900円もの巨額の市税の滞納を許したこと。

A平成18年5月以降も、1866万2932円と、滞納税額の3倍近い議員報酬を平沼氏に支払いながら、土地建物に対して抵当権を設定するのみという判断を行ったこと。

Bさらに、現在、その換価の猶予が2年に達しようという事態に即してなお、議員報酬の差し押さえを行わず、橿原市に入るべき税収を全額徴収出来ていないこと。

 からして、およそ、橿原市には一刻も早く平沼氏の滞納市税を徴収しようとする意思が皆無であり、財産の管理を怠っていると判断せざるを得ない。

 それらの主な責任は、平成19年10月まで12年に渡って橿原市長の職にあった安曽田豊氏をはじめ、平成18年4月から1年間総務部長として収税課を監督していた●●●●氏(現・理事)、平成19年4月から現在に至るまで、総務部付き税担当部長として、収税課を監督している■■■■氏、平成17年4月から2年間、総務部次長であった▲▲▲▲氏、平成17年4月から総務部参事(収税課長事務取扱)・平成19年4月から総務部次長(収税課長事務取扱)となった▼▼▼▼氏にある。

 また、平成19年10月以降橿原市長に就任された森下豊氏にも、その職責を負った日から、議員報酬の差し押さえに踏み切らなかった「怠る事実」が存在する。

 すでに述べたとおり、地方税法第15条等が示す正当な徴収と換価の猶予の要件は、かなり厳しく、そう簡単に認められるはずのものではない。

 市が議員報酬の差し押さえをせず、滞納金額が膨らむに任せて放置してきた「理由」、徴収猶予の申請などの手続きが行なわれたものであれば、それらを行った「理由」、土地建物の換価を猶予してきた「理由」の解明と、それらの手続きがきちんと法に則ったものであったかどうか、市民への説明が出来るよう、厳正なる監査を行って頂きたい。

(2)  ここまでの議論に対して、市からはおそらく、最終的に税の不納欠損処分を行うまでは市の損害とは確定していないという反論があることと思われる。

 しかしながら、そもそも、橿原市が今まで平沼氏の滞納市税の幾分かを不納欠損処理してこなかったという保証はどこにもないのであり(市民の露知らぬ間にそのような事態があったとすれば、当然それは1年を遡るものであったとしても「怠る事実」として責任の所在を明確にすべき事案である)、その事実確認も含めて監査を行うべきである。

 これについては、橿原市議会議員・奥田寛が平成19年3月議会・12月議会・平成20年3月議会の本会議の一般質問の中で、

「市議会議員などの非常勤の特別職を含むすべての市職員の納税状況などを確認すべき」

「市長や市議会議員が市税を滞納している場合には、市職員が対応しにくいと思われるので、弁護士など外部の人間を短時間勤務の徴税吏員として採用することも考えるべき」

 等と主張してきたのに対して、吉本重男氏(平成20年3月議会で理事として答弁・現教育長)、西本清文氏(平成19年3月・12月議会で企画調整部長として答弁・現理事)、■■■■氏(平成19年12月・平成20年3月議会で総務部税担当部長として答弁)らが一貫して否定的な見解を述べ、橿原市が、今に至るも非常勤の特別職員等に関する納税状況等の把握を怠り、状況を市民に報告していないことも疑惑を招く一つの原因となっている。

 このような状況では、仮に、平沼氏の土地建物に関する抵当権設定が解除されたとしても、それが市税滞納が解消されたためであるのか、それとも滞納額が不納欠損処理されてしまったためなのか、登記事項証明書からは外見上判断できないのであるから、いつまでも市民の間に疑惑が残り続けることになるであろう。

 そのような疑惑を解消するためにも、本件のような事例については徹底した監査が必要であるし、本件住民監査請求の結果如何に関わらず、自主監査に努めて頂きたい。

(3)  取り得る市税をあえて無意味に猶予し、市職員が本来の徴税義務を放棄した結果、各単年度の歳入と出来ていないことは、「損害」であるし、今現在も、平沼氏の議員報酬の差し押さえを直ちに行わないことによって、橿原市は、滞納額を不納欠損処分せざるを得なくなる可能性を自ら飛躍的に高めており、その状況の看過・放置ぶりはもはや異常かつ違法であるとしか言いようがない。

 事実証明書@から分かるとおり、平沼氏の土地建物は民間金融機関によって1番に高額の根抵当が設定されており、さらに、9/10が本人、残りの1/10が妻の所有となっているため、公売に付して換価することが難しい物件である。

 このような物件の抵当権をとっていても市税滞納額が確保されているとはとても言い難く、他の平沼氏の収入に目を転じてみれば、議員としての報酬が約束されているのは平成20年5月から21年2月までのわずか10ヶ月分、その間の議長報酬から源泉徴収される所得税・特別徴収されるべき市県民税・議員共済費(議員年金)の掛け金等を除くと、手取りは568万2829円程度と見込まれ、抵当権設定額を下回っていることになる。

 平成20年5月25日より、順次、直ちに議員報酬の差し押さえを行っていかねば、滞納総額が回収できなくなる可能性が高まるばかりなのである。

 さらに、この1番の根抵当権者である民間金融機関への返済状況の確認や、議員報酬からの取り分の調整を■■税担当部長らが綿密に行ってきたかどうかも問題である。

 例えば、1番根抵当があらかた返済を終わっており、単に抵当権設定のみが形式的に解除されずに放置されているだけという可能性もないわけではなく、その場合、報酬額から市税滞納の返済に回す分を増やして一刻も早い回収を図ることは市として当然であろう。

(4)  地方税法第15条によれば、徴収の猶予の申請が認められる期間は1年だが、事情によりさらに1年間再延長される場合がある。

 地方税法に列記される制限の厳しさに鑑みて、この条件が平沼氏に適用されているとは考えにくいのだが、あえて可能性の一つとして議論しておくならば、猶予の理由が仮に正当なものであったとしても、2年を超える滞納があるならば明確な違法である。

 また、換価の猶予に関しても、同様に正当な理由が必要となるが、この期限はどんな緩い解釈に従っても、法律上、抵当権設定から丸2年を経た平成20年5月24日までのはずである。

 本件では、今、現在すでに■■税担当部長らが議長報酬の差し押さえだけでなく、抵当権設定した土地建物の市税徴収のための換価手続きを怠っていることを監査請求しているが、636万6900円が5月24日に完納されていなければ、それは徴収猶予の違法に輪をかけて、換価の猶予の違法をも犯していることになるであろう。

 ただ、5月24日までに■■税担当部長が抵当権を解除したとしても、それが不納欠損処理その他の理由によるものなのか、それとも滞納税額が満額徴収出来たためなのか、登記事項証明書からは客観的に判断することが出来ないので、上記を踏まえた上で、監査期間中に状況の変化があればその関連資料とともに請求内容の追加的な変更に関する文書を提出させて頂きたい。

 また、状況の変化に即応した監査を行い、最終的に滞納税額がいかに処理されているか、市民に対する説明をお願いしたい。

3.橿原市が行うべき措置

 上記の各理由により、橿原市は、平沼市議会議長の報酬を直ちに差し押さえ、あるいは抵当権設定した土地建物の換価を行い、滞納市税を回収するべきである。

 また、非常勤職員(とりわけ、市議会議員)の市税滞納等に関する調査を行い、公表するべきである。

「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律」第七条には、(地方公共団体における資産等の公開) として、地方の指定都市の議員や首長に関しては、条例によって資産公開が義務づけられているが、橿原市議会のような指定都市でもない市町村議会にはその網がかかっていない。

 しかしながら、地方の議員であっても公選された存在であることには何ら変わりがない。

 議員の税未納とそれに関する報道・名誉毀損について扱った「東京高等裁判所平成14年5月23日判決/平成13年(ネ)第6387号」(事実証明書D:判例時報1798号81頁所収)は、「議員のような公人については、これらの者の公職者としての能力、資質、公共奉仕精神、廉潔性等人格的側面も公職者として適格かどうか議論できるよう、プライバシーにわたる生活行動部分も報道が許される」と述べている。

 本件に類似の例としては、橿原市とほぼ同じ人口規模の福岡県大牟田市で起こった「税未納で市議長辞職へ 固定資産税など140万円」(事実証明書E:朝日新聞西部地方版記事:平成19年7月28日)の報道などもあり、地方議員の資産・特に納税状況に関しては、公表され、一般に議論されるべきものであることが明らかである。

 法的義務がなかろうとも、先進的な地方議会がすでに実現しているように、今後、橿原市議会も資産公開を盛り込んだ政治倫理条例を制定し、開かれた議会になっていくことを期待して、本件監査についても可能な限り事実を明らかにされるよう求めるものである。

4.監査請求期間について

 地方自治法の請求期間の要件は1年であり、本件監査請求の中心は、今現在、橿原市が平沼氏の議長報酬に対する差し押さえを怠っていることに対するものなので、問題はない。

 1年を超える判断・処分については、本件市税滞納の重要性・継続性とともに、橿原市が、自主的に各種の関連情報を公開してこなかったことにより、実質的に法務局の登記事項証明書以外に市民に公開されている情報がなかったため、橿原市に対して各種の開示請求を行いつつ、その大部分が非公開になっていることなど、やむを得ず時間がかかっていることをご考慮頂きたい。

 本件に関する資料で、後日入手見込みのものに関しては、追って提出する予定である。

以上

添付資料

事実証明書@:「橿原市が平沼諭氏に支出した主な議員報酬の概算表」:橿原市議会議員・奥田寛作成(平成20年5月2日)
事実証明書A:「橿原市●●町●丁目****-***の土地建物に関する登記事項証明書」:法務局(平成20年5月2日)
事実証明書B:「滞納整理フローチャート図:地方公共団体徴収実務の要点1821の2〜3」:自治体徴収実務研究会編集:(平成13年5月20日加除式)
事実証明書C:「奈良県教員関係職員録・部分」:奈良県教職員組合互助会編(平成18年・平成19年)
事実証明書D:「東京高等裁判所平成14年5月23日判決/平成13年(ネ)第6387号」:判例時報1798号81頁所収
事実証明書E:「税未納で市議長辞職へ 固定資産税など140万円」:朝日新聞西部地方版記事(平成19年7月28日)


(2)意見陳述書(20080530)

 

平成20年5月2日付け橿原市職員措置請求に係る意見陳述書

平成20年 5月 30日

橿原市監査委員 各位

請求人               

住所 奈良県橿原市白橿町8-17-14 

氏名 : 奥田 寛  印 

職業 : 橿原市議会議員


 平成20年5月2日に地方自治法242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添付して監査請求した件に関し、さらなる事実証明書を別紙添付の上、以下のとおり意見を陳述します。

陳述の要旨

(1)新事実の提出事実証明書F:本件に関する橿原市議会議員(現・議長)・平沼諭氏のインタビュー報道):あさひ放送ニュース「ゆう」など(平成20年5月2日)

 平成20年5月2日に奥田と市民18人が、「橿原市職員措置請求書」を提出した後、同日午後6時17分からのあさひ放送ニュース「ゆう」において、本件に関する平沼氏のインタビューが報道された。

 この中で、平沼氏は、記者の質問に対して

「(Q.なぜ、滞納を?)4期目になったときに(会社員を)退職した。その習慣が続いていたというのがあって」

「(Q.自分で納めに行くのを失念していた?)失念というよりも大丈夫やという甘えみたいなもんがあったわな」

「(Q.税金を払わなくていいという甘い考えがあったのか?)いや、そうじゃなくてすぐに払えると思ったわけさ」

 と答えている。

 これらの言葉から、平沼氏の議員歴は現在、6期目であるが、初めの3期12年間は会社員と議員を兼業していたため、主たる給与の支払のあった民間会社により、市・県民税の特別徴収がなされており、また、社会保険等の加入もあったものの、4期目以降現在までの11年数ヶ月は、議員専業であったので、それらがなくなり、議会事務局もまた、市・県民税の特別徴収を行わなかったので、市・県民税と国民健康保険税などを自主納付すべきところ、「すぐに払えると思っ」て、漫然とこれを放置し、市税を滞納していたことが推察される。

 地方税法第15条に示された徴収の猶予は、特別な事情のある場合に限って、滞納者からの申請書を受理し、どんなに長くとも2年を越えない範囲で納税の猶予を認めるものであり、上記推察される11年数ヶ月の延滞が事実ならば、平沼氏の事例は、明らかにこの法に反している。

 市議会議員(議長)としての報酬を年間約1000万円と見積もれば、市は、市民から徴収した税金から予算を組んで、平沼氏に対して1億円以上の議員報酬を提供しながら、636万6900円もの市税の滞納を許してきたことになり、これは、もはや徴税の現場において何らかの違法な措置が行われていなければ有り得ない現象であろう。

 また、地方税法第21条は、「税金の徴収若しくは納付をしない」(ことを扇動した080615追記)者に対して「3年以下の懲役又は20万円以下の罰金」という刑事罰を設けており、長年に渡って税金の徴収をしなかった安曽田豊元橿原市長らと、税金の納付をしなかった平沼氏は、ともにこの条項に触れている可能性が極めて高い。

(2)新事実の提出事実証明書G:平成20年5月14日付け橿原市菖蒲町2丁目1520-138の土地建物に関する登記事項証明書)

 5月14日付けの法務局の登記事項証明書によれば、本件監査請求提出後の5月7日に、橿原市は、平沼氏が所有する橿原市菖蒲町2丁目1520-138の土地建物に対して行っていた636万6900円の市税の換価の猶予に係る抵当権設定を解除した。

 これについて、平沼氏は本税と延滞金の双方を完納したと主張しているようだが、そのことを証明する文書等は一般市民の目に示されていないため、事実は依然、謎のままである。(事実証明書H:「市民税滞納『おわび』 橿原市会議長、延滞金含め完納」:産経新聞記事)

 そもそも、この636万6900円が本税であるのか延滞金であるのか、それともその双方であるのかすら定かではないので、この金額以上の市税滞納があった可能性も否定できない。

 また、念のために述べておくならば、市が税を不納欠損処理した後に納税証明を取れば、当然、その納税証明書には税の未納がない旨記されることになるので、そのような文書は完納の証明にはなり得ないものである。

 仮に直近の年度の本税と延滞金が完納されたのが事実であったとしても、滞納が11年数ヶ月に渡るものであるならば、過去の本税や延滞金などが不納欠損処理されている疑惑は依然として残っている。

 地方税法第15条の9は、徴収や換価の猶予を行った場合、特別な事情があれば延滞金の免除が有り得ることを述べているが、言うまでもなく、平沼氏のように議員としての高額かつ安定した報酬がある者に対しては、徴収や換価の猶予を行うこと自体に問題があるし、さらにその延滞金が免除されるなどということは、到底許される作業ではない。

(3)橿原市が行うべき措置

 5月2日付け「橿原市職員措置請求書」に示した諸点に加えて、上記の各理由により、橿原市は、平沼氏の市税滞納に関する11年数ヶ月の事務作業すべてにおいて、不納欠損処理などの損害が発生していないか確認し、損害があった場合にはその回収に努めるとともに、公務員倫理に反し、あるいは刑事罰に触れる作業が認められる場合には、速やかに関連機関に通報するなどの措置をとらなければならない。

(4)監査請求期間について

 地方自治法の請求期間の要件は1年であるが、本件監査請求後に、平沼氏の市税滞納期間が11年数ヶ月に及ぶものであることが明らかになっており、一般市民がこの事実を知り得てから申し述べる請求内容に関しては、請求期間の要件を満たしていると言えるはずである。

 監査委員各位におかれては、本件の重要性・継続性に鑑みて、1年を超える判断・処分についても損害と違法の確認を積極的に行われた上で、しかるべき措置を取られることを求める。

(5)平成20年5月2日付け「橿原市職員措置請求書」の訂正

 5月2日付け「橿原市職員措置請求書」の文中の以下の2点を訂正する。

3ページ19行目より

(誤) 地方税法第15条によれば、換価の猶予の要件は、徴収の猶予の要件よりもさらに厳しく、盗難・事業の休止・事業の廃止・事業についての損失などに限られ、その期間も、通常は1年、長くとも2年を超えることは出来ない。

(正) 地方税法第15条によれば、換価の猶予の要件は、徴収の猶予の要件よりもさらに厳しく、その期間も、通常は1年、長くとも2年を超えることは出来ない。

4ページ19行目より

(誤) 橿原市(教育委員会)は、事実証明書Aにも名前のある平沼諭氏の妻・◎◎◎◎氏に対して、平成18年度・19年度・20年度、橿原市立八木中学校に勤務する正規の教職員としての生活給を支給している。

(正) 橿原市(教育委員会)は、事実証明書Aにも名前のある平沼諭氏の妻・◎◎◎◎氏を、平成18年度・19年度・20年度、橿原市立八木中学校に勤務する正規の教職員として服務監督し、県費負担教職員としての生活給を得ることを認めている。

以上

添付資料

事実証明書F:「本件に関する橿原市議会議員(現・議長)・平沼諭氏のインタビュー報道」:あさひ放送ニュース「ゆう」など(平成20年5月2日)
事実証明書G:「平成20年5月14日付け橿原市菖蒲町2丁目1520-138の土地建物に関する登記事項証明書」:法務局(平成20年5月14日)
事実証明書H:「市民税滞納『おわび』 橿原市会議長、延滞金含め完納」:産経新聞記事(平成20年5月11日)

 

平成20年5月2日付け橿原市職員措置請求に係る意見陳述書

に補足した口頭意見陳述の要旨(平成20年5月30日/奥田寛)

 

 平沼議員の土地建物に関して、平成18年5月に橿原市より636万円の市税の換価の猶予のため抵当権が設定されている。

 平沼議員は、これについて、本税・延滞金ともに完納したと主張しているようだが、そもそも、この636万円が「本税」なのか「本税+延滞金」なのか、「延滞金」なのかさえ明らかしておらず、もしもこの金額の中に「本税」が残っているならば、平成19年5月の「完納」までに、新たな「延滞金」が発生しているはずであり、これについても、不納欠損処理等がなされていないか調べる必要がある。


(3)監査結果は却下(20080627)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


(4)監査結果についての公開質問状(20080729)

 

平成20年 7月 28日

橿原市監査委員 各位

橿原市職員措置請求書請求人・質問者

 住所 : 橿原市白橿町8-17-14 
職業 :
 橿原市議会議員     
名前 :  奥田 寛 
   印   

外 15名 

平沼前議長の市税滞納に関する監査結果についての公開質問状

 平成20年5月2日付け提出の、平沼諭・橿原市議会議長(当時)の滞納市税について、議長報酬の差押さえ等によって直ちに回収することを求めた「橿原市職員措置請求書」と、これに関する5月30日付け意見陳述(書)に対する、「橿原市職員措置請求に関する監査結果について(通知)」(橿監第45号・平成20年6月27日)を拝受いたしましたが、これについて、請求人一同、検討いたしましたところ、疑義がありますので、下記のとおり質問させて頂きます。

 監査の結果については、いわゆる行政処分ではないため、行政不服審査法に基づく異議申し立てや再審査ではなく、住民訴訟に向うべきところですが、本件につきましては、監査の「内容」というよりは、通知・公表の「外形」が不完全であるために、地方自治法242条第4項に定められた「第一項の規定による請求があつた場合においては、監査委員は、監査を行い、請求に理由がないと認めるときは、理由を付してその旨を書面により請求人に通知するとともに、これを公表」するという、「監査委員による、監査結果とその理由についての説明責任」が果たされておらず、請求人や市民の、説明を受ける権利が侵害されているものと考えます。

 監査結果の「外形」について、他の自治体の監査委員事務局に問い合わせたところ、「異議申し立てが出来ないからこそ、監査結果についての個別の問い合わせがあった場合には、守秘義務に反しない限り丁寧に説明するようにしている」との答えを頂きました。

 この質問状についての回答は、誠実に回答しようと思えば可能な範囲であり、それが為されないならば、もはやそれは法的問題ではなく、監査委員としての皆さまの資質の問題であると認識していることをあらかじめ申しあげておきます。

 本件に関するご回答を、可能な限り速やかに、遅くとも2週間以内に頂きたく、よろしくお願い申しあげます。

(1)監査結果通知が平沼前議長のことを「A氏」と称しているのはなぜでしょうか。また、その他の文言について、マスキング(空白)を挟み込み、日本語として意味のとおらない表現をされているのはなぜでしょうか。

 言うまでもなく、平沼前議長は公人であり、本人自身が平成20年5月2日付けあさひ放送ニュース「ゆう」のインタビューなどに答えて自ら市税を滞納していたことを明らかにしており、その他のマスメディアも実名報道を行っています。

 これに関しては、5月2日付け「橿原市職員措置請求書」においても、議員の税未納とそれに関する報道・名誉毀損について扱った「東京高等裁判所平成14年5月23日判決/平成13年(ネ)第6387号」(事実証明書D:判例時報1798号81頁所収)が、「議員のような公人については、これらの者の公職者としての能力、資質、公共奉仕精神、廉潔性等人格的側面も公職者として適格かどうか議論できるよう、プライバシーにわたる生活行動部分も報道が許される」と述べている事実などを指摘して、地方議員の
資産・特に納税状況に関しては、公表され、一般に議論されるべきものであることが明らかであると述べてきたところです。

 にも関わらず、本件監査結果の通知においては、平沼前議長の市税滞納の内容を明らかにするどころか、一般市民にとって既知の、公の事実というべき平沼前議長の氏名を伏せておられますが、その作業に一体何の意味があるというのでしょうか。

 この件に関して、平成20年7月9日(水)午後3時より1時間、請求人らが監査委員事務局長ほかの職員から聞き取りをさせて頂いたところ、請求人への監査結果通知のみならず、市長への報告・市民への公表いずれも同一の、マスキング済みの文書であるとの回答でした。

「マスキングした文書が正式な決裁を経た文書として公式文書として保存され、マスキングしていない文書が決裁を受けていないメモ程度のものとして扱われ、文書保存されないのはおかしいのではないか」

 と質問しましたが、今のところ、事務局からは

「マスキングしていない文書も正式な決裁を受けた公文書である」

 との明確な返事は頂いておりません。また、

「インターネットや雑誌により公表される文書においてはともかく、請求の内容を熟知している請求人自身への通知においてマスキングをするということについては意味がなく、また、あってはならないことだと思うが、他自治体にそのような先例があるのか」

 と問うてみましたが、これについても

「先例を確認した」

 との明確な返事は頂いておりません。

 監査結果通知3ページ目の下から5行目のくだりには、

「F(空白)は、事実証明書Aにも名前のあるA氏の妻・B氏を、平成18年度・19年度・20年度、(空白)に勤務する(空白)の(空白)として服務監督し、(空白)として生活給を得ることを認めている。」

 という表現がありますが、一般市民がこの文意を理解することは不可能ですし、請求人であれば、監査結果の通知文書を、措置請求書とつきあわせてみればおおよそ推測できるとは言うものの、それはそれで「事実を熟知している請求人に自身に対して伏せる」ということに意味がない上に、やはり、参照も注記もないこの表現では、マスキングの文言を断定することまではできず、請求人として、あるいは市民として、説明を受ける権利が侵害されているものと言わざるを得ません。

 市民へ公表することを目的に作られた公文書が、このような何の注釈もない意味のとおらない文章で作成されるということは、公務として許されることではありませんので、そもそも、監査委員としては、本件について守秘義務にかかる部分についてもきちんと監査を行ったこと自体を示すことができる監査結果を原文として作成し、市長に報告を行い、その上で、守秘義務に抵触する部分については注釈付きのマスキングを施した上で(当事者の氏名などは伏せる必要がない)請求人に通知をし、後に一般市民から、市長に報告された監査結果原文について、情報公開条例に基づく文書開示請求が出た場合には、部分公開に関する異議申し立てや情報公開訴訟ができるよう、市民の「知る権利」をきちんと確保した手続きを踏んで頂かなくてはならなかったのではないかと思います。

(2)監査結果通知の9ページの下から9行目以降に、平沼前議長の「市税の課税状況、市税の納税状況、納税折衝状況、消滅時効の中断措置状況及び不納欠損処理の存否をそれぞれの台帳及びシステムデータ等で、それらが保存されている限度において照合、精査した」と記されていますが、監査に要した公文書の書類名などの、守秘義務にあたらない部分さえ、監査委員の守秘義務という口実で一切記述していないのは、単なる説明不足ではないでしょうか。

 請求人の知る限りでは、橿原市の監査結果通知において「守秘義務」により監査結果の概要を省略することも初めてなら、「守秘義務」によって、「守秘義務」以外の部分の記述を省略することも本件が初めてです。

 後日、情報公開条例の手続きによって、監査委員から橿原市長に提出された「住民監査請求に係る資料の提出について(依頼)」(橿監第24号 平成20年5月8日)という文書が公開され、監査委員が監査に要した公文書の書類名などの一部が明らかになりましたが、この事実自体が、この公文書の文書名等が「守秘義務」にあたるものではなかったことを明確に証しています。

(3)「徴収の猶予」「換価の猶予」「不納欠損処理の確認」「延滞金の減免」「議会事務局の市税等の特別徴収義務」などの項目にまたがる市民からの監査請求を受けて、監査委員が調査を行い、結果を通知するにあたって、あえて「換価の猶予」と「不納欠損処理の確認」のみに絞り込んで記述を行い、違法の疑いの極めて強い、平沼前議長の「徴収の猶予」や「延滞金の減免」、「議会事務局の市税等の特別徴収義務」については、故意に書き落としをされているのはなぜでしょうか。

 上記、「住民監査請求に係る資料の提出について(依頼)」(橿監第24号 平成20年5月8日)では、

A税目別課税状況のわかる書類(延滞金含む)

E延滞金免除に係る書類(無ければ、なしとの文書)

 を監査委員が市長に請求し、調査を行ったことが明らかですが、前述のとおり、監査結果通知9ページの下から9行目は、平沼前議長の「市税の課税状況、市税の納税状況、納税折衝状況、消滅時効の中断措置状況及び不納欠損処理の存否をそれぞれの台帳及びシステムデータ等で、それらが保存されている限度において照合、精査した結果、平成20年5月30日、A氏の市税の収入未済は解消されていること及び不納欠損処理された滞納市税は存在しないことを各確認した。」と続けられていますが、延滞金
の減免が為されていたかどうかについては、記述がありません。

 平沼前議長の過去の延滞金について、減免されている疑いが濃い中で、あえて「市税の収入未済は解消されている」との表現が使われていますが、ここでの「市税」は本税と解釈すべきか、延滞金を含むのか、それすらも明らかにはされていませんし、そもそも、過去のある時期に、延滞金の減免がすでに為されてしまったならば、「市税の収入未済」はなくて当然であり、「不納欠損処理された滞納市税は存在しない」とは言うものの、不納欠損はあくまで本税の徴収を諦めた金額に過ぎず、延滞金の減免については不納欠損額として計上されるものではないので、結局、この表現も、平沼前議長の延滞金減免の疑惑に対して何も答えていないばかりか、かえって疑いを強めているものと言えます。

 平沼前議長のように安定した報酬がある場合、たとえ換価の猶予を受けていたとしてもそれに基づく延滞金の減免は不可であると思いますが、本件では、監査請求提出直後に繰上げ納付が為されている可能性もあり、もしも繰上げ徴収可能な事例であったならば、収税課としては、換価の猶予を解除して「猶予の効果」を取消した上で徴収を行うべきであって、その際には、換価の猶予に係る延滞金の減免は認められず、延滞金を含む全額徴収に臨む必要があったことになりますが、そこまで踏み込んできちんと調査をして頂いているのでしょうか。

 (2)では、守秘義務を理由にした説明不足について伺いましたが、延滞金の減免について調査を行いながら、あえてそのことについて触れずに、しかも、一見すると徴収できなかった金額がなかったかのように見える表現で監査結果を書かれていることについては、単なる説明不足というよりも、むしろ、意図的な情報隠しの疑念すら覚えます。

 このことについては、ぜひ、監査委員自身の名誉のために、詳細な説明を頂きたいと思います。

 なお、「住民監査請求に係る資料の提出について(依頼)」では、

F議員報酬差し押さえ未着手の理由

 についても調べておられますが、まさにこれに絡んで、「地方税法に反した2年以上の徴収猶予」が行われ、「議会事務局が市税等の特別徴収義務」を果たさなかったことがこれを助長しているものと思われます。

 これらの「延滞金の減免」「徴収の猶予」「特別徴収義務」の問題は、単に平沼前議長一人に留まらず、他の類例すべてにおいて市の収税事務がいかにずさんに行われているかということを示す重要なポイントですので、調査をされたのであれば、きちんと事実を明らかにし、意見を付して頂かねばならないと思います。

 池田税担当部長と収税課からの聞き取りでは、徴収の猶予申請が出ているのは年に1件か2件くらいしかなく、残りは2年を過ぎていても、分納誓約を取るのみで、実務上の猶予扱いになっていること、また、徴収と換価の猶予に係る延滞金の減免についても、部長決裁であるにも関わらず、部長の手元まで決裁がまわってくるのも平成19年度で1件ほどしかなく、大多数は収税課の窓口で、延滞金の減免申請書も提出されないままに減免されていることが明らかになっています。

 本来は、徴収猶予の申請書を受け付けた上で、盗難や災害などやむを得ない事情があるときに限って猶予が行われた事例について、延滞金の減免申請書を提出させ、その起案に関して部長が決裁をしなければならないはずですが、実務上の猶予扱いになっているものも延滞金の減免の対象にするなど、これらすべての手続きが手抜きされており、部長の決裁を受けた件についても徴収猶予の申請書が提出され、猶予要件を満たしていると判断された事例であったかどうかの確認、換価の猶予上の減免要件を満たしているかどうかの確認、延滞金の減免対象とする期間が、猶予許可期間(最大2年)を超えた範囲にまたがっていないかどうかの確認などが省略されている可能性が高く、本当に減免の要件を満たしているものか疑問です。

 各年度だけでなく、直近の平成19年度に収税課が何件・どのくらいの金額の減免を行ってきたのか、収税課自身が把握すらしていない状況であり、ぜひとも積極的な監査の必要があると考えます。

(4)監査結果通知の末尾の意見において、「収税課のA氏に対する市税収納交渉には違法または不当な点はなかった」と説明抜きで述べていますが、このくだりについても、もう少し詳しい説明を頂きたいと思います。

 この文章は、さらに、「A氏が請求人らからの本件監査請求がなされた後、短日間に滞納税額を納付している事実は、市民に対し、収税課によるA氏に対する徴税権の行使がA氏が市議会議員であるために恣意的に行われたのではないかとの疑念を抱かせる事態となったことは、事実であり結果としては遺憾である」と続いていますが、請求人らは、まさしく、本件監査請求がなければ、平沼前議長の滞納市税の回収は難しかったであろうと認識しており、11ページの下から7行目の、「A氏から滞納市税が全額納付され、不納欠損の事実も確認できないことから公金徴収権は確保され、不公平性又は偏頗な徴税行為の存在を認めることはできなかったため、市長には裁量権の逸脱又は濫用の事実を認めることはできなかった」というくだりには、特に、問題があると考えます。

 請求が提出されたことによって全額納付が為されたことをもって、請求提出前の事務が適正であったことを証明できるわけもなく、監査結果のこのくだりが述べられるには、少なくとも、平沼前議長の滞納市税が、収税課との間に交わされていたはずの分割誓約の通り、月々、遅滞なく支払われており、本件請求が出るまでにほぼ全額回収の見込みがついていたこと、平沼前議長が直近の現年課税分を滞納しておらず、他方面への借金返済よりも税の支払を優先的に行っていたことなどを監査委員の皆さまが確認していなければならないものと思いますが、すでに何度も指摘しているようにそれらの説明が、この監査結果通知では一切省略されています。

 その他、換価の猶予が1年で済まずに2年に渡り、なおかつ報酬の差し押さえをしないことが、なぜ不当ではないのかなど、監査「内容」に関わっては議論の余地がいくらでもありますが、冒頭述べましたとおり、今回は監査の外形に関する質問と割り切っておりますので、守秘義務に反しない限りの誠実な回答を期待して、以上とさせて頂きます。

 改めまして、どうぞよろしくお願い申しあげます。


(5)監査結果についての公開質問状に対する回答(20080801)

 


奥田寛HPのTOPに戻る